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あたしはシーズー犬の「チキ。」
一応、女の子です。
目はロンパリで、顔はちょっとブスかもしれないけど、みんなはかわいいと言ってくれます。
今のチキのご主人は、居酒屋の「さっちゃん」幸子さんです。さっちゃんは、チキをすごくかわいがってくれ、時々お店にも連れて行ってくれます。エサもドックフードと、お店の残り物を、たくさんくれます。
でもチキは、ドックフードよりお店の残り物の、おでんがだい好きでーす。
ある日、さっちゃんは、お店に来るお客さんの1人と結婚することになったそうです。
その日さっちゃんは、朝から忙しそうに、いろんな荷物をまとめていました。
チキは思いました。「そうださっちゃんは結婚するので引越しするんだ!」
チキも、一緒に連れていってくれるんだ。
でも最後の夜、さっちゃんはチキに言いました。
「チキごめんね。今度わたしと結婚する人が、犬が嫌いなの。だから、ほかの人がチキをもらってくれるの。幸せになってね。」
その夜、さっちゃんはチキを車に乗せ、今度チキをもらってくれる人の、家に行きました。その、知り合いの女の人もチキを可愛がってくれましたが、チキは「さっちゃんに逢いたい。さっちゃんのおでんが食べたい。」 「そうだ、さっちゃんに会いに行こう。」と決めました。
その女の人は、朝ゴミを出す時、チキをリードなしで連れて行きます。そして、必ず近所のおばさん達と、立ち話しをしています。
そうだ、この隙だ。「さっちゃん今から行くよ。」
チキは、一生懸命その場所から駆け抜けていきました。チキはさっちゃんの匂いをたよりに春の風の中を何時間も何時間も歩きました。外にはもう夕闇がせまって、暗くなり始めました。
「疲れたよう、おなかすいたよう、のどが渇いたよう。」チキは疲れて、草むらの中で座り込んでしまいました。
チキは食べる物が無いので、その草むらの中の、草を食べることにしました。「ちょっと苦いけど、お腹にたまればいいな。」空にはもう星が、キラキラ輝き始めました。
次の日も次の日も、さっちゃんといた元の家を探しながら、チキはテケテケ歩きました。
お腹がすいて、食べるものは道の草や、いもむしさんとかミミズさんも食べました。かえるさんは食べようと思ったら逃げられました。お水は、ちょうど雨が降ったので、道にたまっていた泥水を飲みました。
何日かたったある朝、歩いていると近くでいい匂いがします。その家の人が、野良ネコのため、キャットフードを置いているところでした。ちょうど朝早く、まだその野良ネコも来ていません。
「今だー。」チキは一目散に、そのキャットフードをむさぼりつきました。
「あー、久しぶりにお腹いっぱいになった。チキ幸せ。」
これで、ここに来れば、しばらくの間エサにありつけると、チキはにんまりしました。ところが、それがチキの甘い考えでした。
次の日、朝早くもう一度その場所に行ってみました。やはり、ネコエサが置いてありました、
それも、昨日より多い量でした。「そうか、昨日チキが全部食べちゃったので、チキの分を多くしてくれたかな。」チキはうれしくなって、エサの容器に口をつけ一口食べた瞬間でした。
「フー」というネコのうなり声で、チキは気がつきました。チキの周りは、数匹の野良ネコに取り囲まれていました。
チキはビックリして、ネコエサをほおばりながらも「ワンワン」と吠えました。
ところが、その野良ネコはチキが吠えても、ひるみません。むしろエサを奪った侵入者を撃退しようと、攻撃的な目を向けて「フー」という威嚇する声で、チキに近づいてきます。
チキは怖くなって逃げようと思ったその瞬間でした。その野良ネコの中で、一番大きいボスらしい黒ブチのオスネコがチキに向かって、襲ってきました。「ガブリ。」チキの肩と背中には、そのネコの牙と爪が食い込んできました。
「痛い、助けて。」チキは必死に応戦しましたが、チキのハス(口)は短く、その野良ネコには届きません。
「こうなったら、逃げるが勝ちや。」ようやくの思いで、そのネコたちを振り切ってチキは一目散に逃げました。
野良ネコにかまれた傷口は、大きく開き、血が滴り落ちています。
「サッチャン、痛いよう、助けてー。」チキは痛さのあまり、家と家の間にしばらくの間うずくまっていました。 つづく
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