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チキは急いで、その切られた血だらけの母ネコのそばに近づき、「誰にやられたんだ。だいじょうぶか!しっかりして!」と大きな声をかけました。
母ネコは、苦しい息の中で「わたしたちノラネコの家族が、あの家の庭に入ると、家の中から男の人が出てきて、カマのようなものを振り回して、私たちに襲いかかってきました。わたしは子ネコたちをかばい、逃げ遅れて切られました。たぶん、ネコ嫌いの人だと思います。」と言いました。
その家の方向には、母ネコの血のあとが、点々と続いていました。やっとで、ここまで逃げて来たのでしょう。
チキは一瞬ひらめきました。「そうだ、カラスのブラックジャックさんに、治してもらおう。」そう思うと、母ネコと子ネコたちに「ちょっと待って。」と言って、一目散に駆けていきました。
「ブラックジャックさーん。」チキは必死で、カラスのブラックジャックを捜しました。しばらくするとチキの泣き声を聞いたのか、カラスのブラックジャックが、チキの前に舞降りて来ました。
「どうしたんだ、また何かあったのか?」カラスのブラックジャックは、チキの必死の形相におどろきました。
「たいへんですッ。ネコのおかあさんが、人間に刃物で切られて死にそうです。何とかしてください。」
カラスのブラックジャックは、それを聞いて、けげんそうな顔つきで言いました。「ネコは俺たちの天敵だ。診てやるわけにはいかない。」そう言うと、横を向いて飛び立とうとしました。
「そんなこと言わないで!」チキは一生懸命、カラスのブラックジャックに何度も何度もお願いしました。
チキの必死のお願いに、ブラックジャックも根負けしたようで、「そのネコはどこだ、案内しろ。」と言って、すぐに飛び立ちました。チキはうれしくて、一目散にその母ネコの所にかけつました。
血だらけの母ネコのまわりには、3匹の子ネコたちが悲しそうに、「ミャー、ミャー。」と鳴いています。母ネコは、ぐったりして、もうびくとも動きません。それを見たブラックジャックは、「これはひどい。傷が、首から肺に達している。これは、人間の医者でも助からない。」そして、こうつぶやきました。「ひどい人間もいるもんだ。まったく人間ていうものは、自分の事だけしか考えないやつが多い。」「もっともその人間に、一番嫌われているのは、俺たちの仲間だけどね。」と言って飛び立って行きました。
チキは悲しくなって、その母ネコに声をかけました。「しっかりして。」母ネコはその声に、閉じていた目をかすかに開け、もう消え入るような声で、「あたしはもうだめです。この子ネコたちをよろしく。」と言いました。チキは何の自信もないのに、「だいじょうぶ、チキにまかせて。」と母ネコに言いました。その言葉を聞くと、安心したかのように、がっくりと首を落としました。それからはチキや子ネコが、何度呼びかけても、全く反応をしなくなりました。子ネコたちは動かなくなった母ネコの前で、まだ鳴いています。
チキは、その子ネコたちに向かって言いました。「いつまでもメソメソ泣くな!あなたたちのお母さんは、天国というところに行ったんだよ。」
子ネコたちは、「天国ってどこ?教えて。あたしたちも行きたい。」といって、チキに聞いてきました。
チキは『あたしも、行ったことないからわかんない。そうだ、死んだらいけるんだと思う。』あ、でもこんなこと言っちゃあいけない、とチキはすぐ反省し、子ネコたちに自信もないのに強く言いました。「とにかく、今日からあたしが、あんたらのお母さんだよ。安心して、あたしについて来なさい!」「メソメソしているやつは、おいてくよ!」と・・・・。
その日から、チキと3匹の子ネコとの旅が始まりました。 |